アラクネの書棚

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林氏『炎の化石』 (幻想SF/FT,20枚)

 砂漠の旅人たちの間に囁かれる、「炎の化石」の噂。
>鉱物ではない。
>炎が石と化したものなんだ。
 一人の男が、岩砂漠が尽きた先で、炎の化石を見たと語り始める……。
■林氏サイト『文技研』→作品(完結)→短文中に収録。

以下感想、ネタバレあり。
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 字下げを廃し、カギカッコ(「」)を廃したスタイルもあるのでしょうか、客観と主観の境界に揺らぎを醸し出すような、不思議な文体だと思いました。

 それでいて、会話と地の文、主人公「俺」とそれ以外の会話は、文体と内容で判別できるため、読みにくさは感じませんでした。正直にいえば、2回目、3回目(多少、距離をとって読み方になる)で、ようやく、字下げやカギカッコの件に気づいたくらいです。

 人物の描写は少なめ。髪も目も服もわかりません。その分、異世界の描写が描きこまれ、ことに方舟の内部は、神社や寺の「胎内くぐり」を連想しました。神社や寺の「胎内くぐり」が、穢れを払う等と信仰されるのに比べて、むしろ、逆ですが……。有機的なような無機的なような、石と金属と内臓の質感。読みながら、H.R.ギーガー*の絵のようなビジュアルが、頭の中に浮かび上がってきました。

 同じ「短文」内に収められた『虚無の宮殿』が、どこか、主人公「旅人」に優しいのに比べて、『炎の化石』の方舟は残酷で悪意的。ホラーを読んでも、その「こわがらせ」の仕掛けのわざとらしさに、怖がるより笑いだしてしまうことがあるくらい、天邪鬼である私が、体の芯にヒヤリと来るのを感じました。

 ラストシーン、「俺」と称した語り手は、方舟の女に引き寄せられながら、意志をふりしぼって、心臓を置き去りにしたのではないかと。そして、他の男たちは誰もそれに気づかなかっただけなのではないかと。そんなことを思いました。

──ほんとうは、映画『2001年宇宙の旅』との関連なんかも書いてみたかったのですが。
 モノリス。胎児。『2001年宇宙の旅』では、ラストシーンの胎児は、悪意の存在とも善意の存在とも判明しません。むしろ「傍観者」であり、無垢/ニュートラルなのだろうというのが、私個人の感覚です。あれを徹底して「悪意」の存在として捉え、再構成すると、『炎の化石』の感触に近くなるのではないか、というあたり……。『2001年宇宙の旅』を見直す機会がとれなかったのと、他者の作品と比較したり検証したりしなくても、この短編『炎の化石』は充分魅力的なので、この段階で投稿です。

 中途半端に書きかけて1ケ月も抱えていたなんて、極秘。


*H.R.ギーガー=映画『エイリアン』の美術担当。モノトーンのイラストレーションは、映画設定を超えて美しい……と思うんだけど^^;↓
http://homepage3.nifty.com/hirapro/hrg/gallery1.htm

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  1. 2006/01/25(水)
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