アラクネの書棚

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

  1. --/--/--(--)
  2. | URL
  3. | EDIT

突発性競作企画『in rain...』~「雨の中にたたずむ人」

自分も参加させていただいている、突発性競作企画第14弾『in rain...』(お題:「雨の中にたたずむ人」)への感想です。長さと作品ジャンルは、企画ページにありますので、こちらでは省略^^

(感想はネタバレありです。一番長いもので原稿用紙37枚という短編揃いの企画ですので、作品を先にお読みいただきますようお願い申し上げます)
Open▽
『雨宿りにて、ある種奇跡的な世間話』SiRaNuI氏

なんだか味のある「化かし話」だな、というのが、読み終わっての印象です。
狐が、(おそらくは花嫁のために)菓子を買いに出たのですよね。この狐殿、トトロも知っているし。人間を嫌っていない気がします。
その狐に出会うのが、ピュアな感じの少年でも少女でもなく、くたびれかけた中年男、というのも、空とぼけた感じがして、ステキでした。


『夜更け前』千草ゆぅ来氏
体罰、あるいは親子間DV(家庭内暴力)という、リアルで「今日的」な問題を描くにあたり、「つららがしゃべる」というファンタジーを噛ませることによって、「作品」に仕上げる、というのは、上手い、と、思いました。

私自身はSF者なのですが。SFってなんだろう、というのはよく考えるだけに、ファンタジーってなんだろう、とも考えてしまいました。

初読のときは、じつは、ラストを非常に暗い取り方をしていました。
企画サイトの感想掲示板の、この作品のスレッドを読んで、作者サマが、これを「希望」として書いていらっしゃることを知り、ほっとしました。


『傘下の男 傘の様な女』シズ氏
あまりにも「いい人」な登場人物をみると、「大丈夫かしら?」と考えてしまうほうなのですが。

このヒロイン・佳紗さんにも、最初、そういう感じを抱いたのです。けれど、両親の話をするに至って、ああ、この女性は大丈夫だと、そういう安心感をもちました。自分が何をやっているかわかっていて、わかった上で自分の行動を選んでいる、そういう「賢さ」

主人公・皆月の変化も、説得力があったように思います。


『幽霊、幻、或いは。』彪峰氏
非常にワタクシ個人的な話で申し訳ないのですが。

何年か前まで、「DNAをアガロースゲルに流して」いた人間です。

DNAというのは生命の設計図とも言われ、それをガシガシと実験に使っては廃棄していた頃、自分が「生命」そのものを軽んじる人間になるのではないかと、漠然とした危惧をいだいていたことを思い出しました。


「未必の殺意」という言葉を聞いたことがあって、該当するかな、と思ったのですが、ネットで調べる限りちょっと違うようで。
http://response.jp/issue/2005/0615/article71606_1.html

とにかく、作中のような「方法」で、相手に危害を加えることができるかどうかは判らない。
ちょっと相手を驚かす程度に終わる可能性が高く、よく(?)ても階段から落ちて怪我をする程度、死に至らしめる可能性はかなり低い。
全体を読んで、「殺すつもりはなかった」のじゃないかな、という気もします。けれど死んでしまったことに対して、「こんなつもりじゃなかったのに!!」と、自責の念に苦しむわけでもなく、あくまで冷ややかに、まるでそれが計画であったかのような感覚をもっている主人公の、冷たさというか、生命の軽さというか。

そんなものを感じました。


『雨の中に、海の中に 』蒼都氏
精神的に本当に煮詰まってしまったときに、馬鹿馬鹿しいくらい大きな概念しかその突破口を開いてくれない、というのは、理解できるので。
この、ヒロイン・春日の「救い方」というのは、納得できました。

軽い感じで始まった話が、途中でずしんと重くなる衝撃力(?)が印象的でした。


『パンを盗んだ泥棒 雨を盗まれた少年』小杉蘭氏
ファンタジーの異世界のような、中世欧州の一シーンのような、よい雰囲気のある短編だな、と思いました。

ただ、正直なところ、どの程度の怪我をして、どの程度動けているのか、というあたり、読者として主人公の状態について行き難いところがあり、これだけ「創りあげる」ことをなさった作品なのに、惜しい感じがありました。

なんだかんだ言いながら、大人たちが、子供だというので手加減していた(あるいは「これ以上やると死ぬな」という判断があって、リンチを途中でやめている)といった描写があると、説得力が増したかな、と思いました。(一人称小説なので、主人公が気づいていないだけ、という解釈もありえますが^^)

重箱の隅をつついてしまいましたが、全体としては、一人で生きてきた主人公の少年が、自分より幼い少年を保護するようになるまでの成長が、きれいに描かれていたと思います^^


『雨降りの森で』刻葉 翼氏
ヒロイン・イーリスのつんでれ?と、レーゲンののほほんっぷりだけでも、十分かわいい、ファンタジーらしい短編だな、と思いました。
けれど、実はこの『雨降りの森』、この地方の繁栄と平和を両方支えている重要な「拠点」であり、幼馴染のまえではいさささかダラシナいレーゲンは、この「拠点」を(おそらくは魔術で)一人で支えている重要人物なのですよね。
イーリスは(なんだかんだ言いながらも)それを理解しており、レーゲンもイーリスに対する気持ちを自覚しており。
きっと二人は幸せになるでしょう。と、そんな予感を与えてくれるラストでした^^


『さめざめと彼女は泣く』小高まあな氏
感想スレッドを読むまで、前半、「彼女」が男性に見えるのは、作者が狙ってなさったことだと思っていました。
つまり、文字通り「男まさり」で働く「外の彼女」と、自分を「タオル」と言ってくれるほどに優しい恋人の前にいる時の「彼女」の、対称性を明確にするために。

彼女と恋人の関係が素敵で、とても良い気持ちで読み終えることのできた短編でした。


『暗い海』はる氏
>微かな星くずの音
>船は星くず入りのソーダ水をかき分けながら
といった、甘いテイストの言葉を重ねながら、最終的に描かれる「世界の正体」とのコントラストが面白い。

これは好みの問題ですが、私個人は、読み終わった後で、「あれはこれを指していたのか!」という「関連性」がもっと強くでていると、さらに魅力が増したかもしれないな、と、思いました。


『春の終わりを告げる雨』三紀藍生氏
すみません、作者さまのサイトにはほとんどお邪魔していない者です。「読んだ感想を、素直にそのまま」とあったので、辛口ぎみです。

これは、作者さまが書いていらっしゃる作品の、外伝的なものにあたるのでしょうか……?
どうも、物語の一番肝心なカードが伏せたまま、という印象を受けました。

もしかすると、作者サマの側は物語を深くお考えになったうえで、陳腐になることを恐れてボカシた部分が、さっと読む読み手にとっては隔靴掻痒感を感じてしまう、という類の「すれ違い」なのかもしれない、と思ってみたり。


あと、たぶん、こちらは瑣末事。
緑色の物体って毛虫かなにかですか?それとも「緑の葉」に病的な恐怖をもっているという話なのでしょうか??


『雨模様』内海涼来氏
 居酒屋という子供に入りこめない大人の世界。
 そこから疎外させるように軒先にいる少女と、雨のなかにたたずむ男。
 客観的にいえば、悲しいことがあったからといって、雨にうたれてみる、というのは、酒の力を借りた愚行ではあるのかもしれないのですが。
 大人の悲しさを感じ取る和子の優しさというか賢さが、可愛いなと思いました。


『いつか見た、いつか出会う、山の彼方』羽田雪氏
女神の登場が、威圧もケレン味もなく、なんだかとても優しい感じがしました。、それでいて超常の者であることを信じさせる「不思議」さがありました。

主人公・正紀は、このことをきっかけに職業を選んで、「幻覚だったのかもしれない」という一抹の思いを抱きながらも、このできごとを信じ続けていくのだろうな、という気がします。

読後感のいい短編でした。


『たとえばそれは、天使のような』雁乃直氏
>「いや、後悔してたよ、かな」
というセリフの意味をしばらく考えまして。

たぶん、彼女は、事故に巻き込まれて。
男は、自分が遅刻しなければ、彼女を約束の時間にその場所から連れ出していれば、と、後悔して。
そこに「取引」が持ちかけられたんですね。

勝手に想像してしまったのは、男は自分が死ぬ時期を知っているのかな、ということ。
それでずいぶん、人生が違うような気がするのです。。。
(作者のご回答は、企画掲示板にていただきました)


『雨に濡れる花束』義王真月氏
「花」に象徴される他人の思いと、忘れられていくこと。……「男」を気にした時点で、彼女はもう半分引き込まれていたのかな、なんてことを考えました。ホラーですね。。。


『あじさい』青毛楽三郎氏
小さな店で食事をして、公園でデートして。口ではなんだかんだいいながら、結局愛のある夫婦の風景、という感じで、ほっとするお話でした。
>雨はもう上がった。ちゃんと青空が広がっていた。
この一行の含意が、なかなか素敵です^^


『ノア』姫川唯志氏
 強いリズムのある美しい文体で描かれるSFで。
 ヒロイン・ジェネの強さ、サロイの愛情、途中で登場するカルゥムの男ぶり、そして行間に見える島のエキゾチックな情景。
 うぉお!と思って読み進み。

…………ラスト、ENDマークのあとのコメントで爆笑しました。


『雨にて』雪叉氏
どこまでが夢でどこからが現実、どれが瑞希の描写でどれが司……、
というのが、読者が瑞希と一緒に夢のなかをさまよっているような、
不思議な印象のお話でした。

由依だけがなんか、妙に力づよくて、現実そのものだったのも、コントラストとして面白かったです。


『灰色の雨』青野優子氏
ドラマチックな物語を読みなれていると、雨のなかで「へたりこんでいた」恵の、なんということもない理由がかえって新鮮でした。

阿佐美の世話やきっぷりも、なんだか可愛らしい感じです。玉の輿より普通の結婚が似合うかも。なんて、余計ゴトですが。




なお。個人的に相性がイマイチだった数点について、感想をパスさせていただきました。
とくにキライとかイヤダとかいうのではなくて、感想が書きにくかった、という程度のことなのですが。
無理矢理に書くのもかえって失礼かと思いましたので。

末筆となりましたが、このような企画をしていただき、また、管理をしていただいています、青野優子氏に感謝の意を表します。

TB:Web小説読書室

Close△


- オンライン小説に愛を/小説・文学

  1. 2006/05/05(金)
  2. | URL
  3. | TB:0
  4. | COM:0
  5. | EDIT

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバックURLはこちら
http://arachne.blog61.fc2.com/tb.php/27-c6d97607
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

FC2Ad


Template:AdanKadan

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。