アラクネの書棚

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wataritori_novel氏『Capital Forest』(ファンタジー、概算1700枚)

共同体カピタルの人々は、14歳の誕生日に、竜に騎る試験をする。竜使いになれば、首都にあるエネルギー転換炉のメルトダウンの災厄からカピタルの人々を守るため、森を探検し移住の場所を探す任務につくのだ。……遠い未来の世界を舞台に、竜使いの少年の冒険と悩み、周囲の人々との交流を描くファンタジー。1700枚超。
『Capital Forest』/ダウンロード版あり

以下、あまりネタバレではない感想。
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 このブログ「アラクネの書棚」は、原稿用紙100枚までを目安に紹介作品を選ぶように努力してきました。100枚であれば、ネタバレの感想を書いても、「感想を読む前に作品を読んできてください!」ということができたからです。
 それが、今回は1700枚。それでもどうしても紹介したいくらい面白い作品だった、ということです。

作者を存じ上げていたことのプラスとマイナス

 実はこの作品、小説とは関係ない議論で、すぐれた論客として知った方の作品です。

 小説以外の文章で作者を存じ上げていたことで、プラスもマイナスもありました。
 マイナスは、議論の理論力を存じ上げていたために、期待値が高すぎるほど高かったこと。この作品の序盤が、ウィルという少年の瑞々しさにあふれた、優れたジュブナイルとして読めるにも関わらず、議論の際の鋭い洞察力に比して、物語が「のんびり」しすぎているように感じてしまったことです。
 対してプラス面は、
「この方の作品が、“これだけ”で終わるはずがない」
 という期待感で、ペースを落さずに読み進めることができたことです。

 また、一番最初はキャラもやや類型的に感じましたが、エピソードが重ねられていくうちに、「でも、こういう人もいるよね?」と思うようになりました。
 一般論的に、「キャラの立ち方(特徴の鮮やかさ)」と「類型」は、いわばコインの表と裏であるように思います。キャラを「鮮やか」にしようとすれば、類型になりがちですし、類型を避けることにばかり気を向けているといつのまにかどのキャラも「作者の分身」になってしまっていたりします。
 この作品においては、「のんびり」した序盤でイメージが確立したキャラが、中盤以降、たくさんの事件をへて息を吹き込まれ、さらに成長していきます。読み終わってみるとそれぞれのキャラの印象は生き生きとしたものとして残っていて、そういう意味でも成功した作品なのだと感じます。

作者の手の内で……

 SF者として最も気になったのは、技術面です。技術面でひっかかると、物語に集中できなくなるのは、SF者の悪い癖です。この作品は「ファンタジー」であって「SF」ではないのですから、科学面でピチリと合う必要はないとも思うのですが。
 単に、私個人が、コミックの「DeathNote」のように、「虚構である“DeathNote”」と、「それ以外の部分のリアルさ」の組み合わせを楽しむ人間である、というだけで、この物語に関しては「虚粒子シールド」という虚構と「それ以上の部分のリアルさ」を勝手に期待していた、ということだと思います。

 最初に気になったのは、「虚粒子シールドを作れる技術力がある世界で、飛行機はないのか?」ということでした。
 このあたりの私の感覚からいえば「技術的矛盾」を気にしない書き手は世の中にはたくさんいます。
「この世界、この物語はどちらへ転ぶか」
 と、期待しながらも、
「技術的整合性なんて、なくたっていんだけどね」
 と、「諦める準備」をしながら読み進めていた、というのが、本当のところです。

 期待が報いられたのは、章だての丁度1/3。登場人物の一人が、昔話をするあたりです。それまで「読者として感じていた疑問」が「作品の伏線」であり、自分が完全に作者の手のうちで踊らされていたことが明白になりました。
 この昔話はすでに矛盾をはらんでいるのですが。その矛盾にキャラクターたちが気づく描写があることで、読者としてはこれが「作者が気にしない」種類の矛盾ではなく、物語の中で完全に仕組まれたものであることを了解します。その謎の全貌を見せていただけるときまで、わくわくしながら読み進めればいい、そう約束されたようなものです。
「でも、こんな前半で伏線回収しちゃって、この先、どうなさるんだろう?」
 と思ったとたんに、大量の新キャラの登場……。
「これはすごい構成力だわ」
 このあたりで、私は完全にシャッポを脱いで、物語の流れに身を任せたのでした。

読み終わってから計算してみた

 作品は、主人公ウィルの視点で書かれていますので、ウィルが知らないことは書いてありません。読みながら気になったことを、読了後に2,3計算してみました。

◇熱気球からの視界は?
 作中には、熱気球から森を見下ろす、という描写があります。読んでいる最中は、熱気球というものはそれほど高く飛べないものだと思い込んでおりまして。
「森の輪郭が見えるということは、森は案外狭いのか?」
 という印象だったのですが。
 調べてみるとトンデモナイ、熱気球そのものには、現在、有人飛行高度20000mという世界記録があるそうです。
 ただし、作品中では、加圧服も酸素ボンベもありませんので、ここまでの高度は出ていないと思いました。
 私が想定した高度は、富士山(3776m)よりちょい下という感覚で、3000m。地球の1辺を6367Kmとして単純計算すると、半径200Km=直径400km程度(東京大阪間くらい)の視界が得られると出ました。
 
◇プランクトン醸成装置だけで砂漠で食いつなげるか
 作中の設定では、プランクトン醸成機・精製水合成機・分子破砕機を持って砂漠を旅してきたことになっています。
 水は空気中の湿度などから精製水合成機で作り出せば解決するとして。
 食品は、プランクトン醸成機と竜の肉ですが、竜の肉は常食ではないという描写があるので、毎日の食事はプランクトン醸成機で賄えなければ食生活は破綻してしまいます。
 食品のカロリーというのは、煎じ詰めると、太陽光のエネルギーを植物が光合成で固定したもの、およびそれを動物が利用したものです。ヒトが食うカロリーを確保するためには、太陽光を受ける表面積を確保しなければなりません。「人口と食料」なるサイトを見ながら計算したところ、エネルギー固定化効率が100%に近いプランクトンが開発できれば、という仮定で、一人あたり必要な受光面積は座布団2~3枚分。ただし、エネルギー固定化効率100%近い、というのは、バリバリwの未来系設定。現在の穀物のエネルギー固定効率は0.1%程度しかないようです。

◇世界人口が一つの都市に住むと
 巨大都市の描写があるのですが、なかなかこれがピンとこなくてですね、現在の人口に置き換えて計算をしてみました。
 2009年現在の世界の人口は68億人だそうです。
 世界一人口密度が高いのがマレ(モルディブの首都)で35,000 人/km2。ちなみに東京中野区が20,000人/km2台だそうですから、……なんだ倍くらいじゃんw
 マレの人口密度を計算してみると1人あたり5.3平方mになりますが、もちろん多層ビルもあるでしょうから、一人が「使用できる面積」はもっと広くなるはずです。68億人がマレの密度で住むとすると、60Km四方くらいに収まることが判りました。東京23区の6倍くらいの面積で、住めてしまいます。
 ついでに、満員電車なみに、一人40cm×40cmの中に立たせるという仮定でも計算してみました。68億人が約10Km四方のなかに納まるという結果が出ました。想像したら壮観ですが、地球の面積に比べると思ったより少ないような気も。
 この作品に出会わなければ、おそらくやってみませんでした、こんな計算。
 
 上記の計算や「メルトダウンとは何だったのか?」について、私のサイトの掲示板で、作者が書き込みをしてくださっているのですが。これは、できれば本編読了いただいてからのほうがよいかな?

 あ、あとですね……。この作品、二次創作OKということになっておりまして。実はノリが暴走して、かなりキャラ萌え系の掌編を1本書いてしまったのですが。ネタバレにになる(し、外へ出すのはやっぱりちょっと気ハズカシイ)ので、完読なさった方でご希望の方があれば、連絡手段を記してコメントください。そーっとお見せします。ちなみに、作者にはもうお見せしてしまいました^^;

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  1. 2009/12/02(水)
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