アラクネの書棚

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梅原タロ氏『拘束され、仕舞われ、閉じこめられる』(純文学,短編)

かなり前に拝読しながら、感想の書けなかった『拘束され、仕舞われ、閉じこめられる』の感想書きに挑戦してみました。小説では、場面や人物を描くのに“視覚”的な描写が多いのが普通ですが、この作品は、すべての描写を“聴覚”で処理した、実験的作品です。
■梅原氏サイト影を抱く小路

以下感想、ネタバレあり。
Open▽
 まず、タイトルに鷲づかみにされました。『拘束され、仕舞われ、閉じこめられる』。

 拘束・閉じこめられる、という、“悪意”を暗示する2語の間にある、「仕舞われ」という言葉は、“大切に”というニュアンスを帯びています。このアンビバレンツを含むフレーズは、作者にとってもそれなりに意味を持つようで、『自閉――きわめて救いも絶望もない話』でもリフレインされます。余談ですが、リフレインは、強調のために取られる一手段だと思っています。頻度が高すぎると、しつこくなるとしても、この方がお使いになる程度であれば、私個人は気になりません。


 □


 なぜ、長らく感想が書けなかったかというと、このタイトルが最初の“フック”になって、私自身の記憶が引き出されてしまい、作品を読み進めながら、自分のことも考えているという、平行状態になってしまったからです。

“作品を読みながら考えたこと”を全部書いたら、半分、自分のことになってしまいますし、作者には何の関係もないことです。けれど、先日のチャットで少し自分の頭の整理もついてきたので、今日は、感想書きに“チャレンジ”してみようという次第。

 読者の記憶が引き出された、その記憶は作者と関係なくても、この作品がそれだけの読者との相互作用をもつ力、“フック”を備えていたのは、作品の価値の一つだと思います。

 冒頭に書いたとおり、“視覚”の描写を省いて、“聴覚”のみで描写が進みます。その描写も、硬い言葉を重ねた、抽象度の高いものです。また、主語は、書き手にあるというか、読者にあるというか、統一が取れています。

 その緊張感も“フック”となって、作品に没入しているにもかかわらず、自分の記憶が引き出され続けるという、一種の共鳴状態に陥ってしまったのではないかと。


 □


 そこにあるにもかかわらず、通常の小説であれば、意味のないものとして描写が省略されるであろう、音。
 車の音、カラスの泣き声、通りすがりの会話。
 視覚描写の代替としての、音。
 彼の足音や、心音。
 
 その中に、ぽんと投げ込まれてくる、彼女の一言。
「人はあまりにも拘束され、仕舞われ、閉じこめられることに慣れ過ぎなのよ」

 ここから、作中世界は、文体の緊張感に追いつき、追い越していきます。作品の独特さが、彼女のエキセントリックさ…キャラクターの存在感を支えているように感じました。

 ラストの彼の台詞が、全体の緊張感を締めくくるに足る、説得力をもっていたことも、書き添えておきたいと思います。

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  1. 2005/10/16(日)
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